Firefox 138.0 で「新しいプロファイル管理」の機能が実装され、現在段階的にロールアウト展開中になります。
従来のプロファイル管理と区別するため、以降「新しいプロファイル管理」と表記することにします。
すぐに試してみたい場合は、about:config で「browser.profiles.enabled」の値を true にすると、メニューバーやアカウントボタン、「≡」メニューの2番目にプロファイルの項目が出てきます。

Firefox は元々プロファイル管理機能を持っていましたが、用途やユーザーで切り替えたいだけのライトなユースケースにマッチしたものではありませんでした。
それが簡単な操作で出来るようになったのはよいのですが、従来のプロファイル管理に付け足し増改築したようなものですので混乱する局面も出てくることが予想され、このトピックを立ててみました。

基本的な操作等につきましては、まだ日本語に翻訳はされていませんがヘルプ記事が用意されていますので下記をご覧ください。
Manage Firefox profiles | Firefox ヘルプ（Google翻訳）

実際に試してみた結果をまとめてみました。

■「新しいプロファイル管理」でできること

• 「＋ 新しいプロファイル」を1回クリックするだけでプロファイルが追加され、別ウインドウで開かれます。
• 作成したプロファイルにわかりやすい名前を付けたり、テーマやアバターアイコンを設定できます。
• プロファイルの切り替えはプロファイル選択画面から選択するだけです。
• Firefox 起動時にプロファイル選択画面を出して選択させるようにもできます。

■「新しいプロファイル管理」でできないこと、注意が必要なこと

• 「新しいプロファイル管理」でプロファイルを変更した直後は変更が保存されていないため、about:profiles を開くと再起動を求められます。
  添付ファイル:
  
  Firefox の別のコピーがプロファイルに変更を加えています.jpg [ 73.78 KiB | 表示数: 5774 回 ]
  
• プロファイルフォルダーは既定の場所に自動作成され、任意の場所（別ドライブ等）に移動することはできません。
• フォルダー名は日本語版の場合、「.」以降は「プロファイル 1」、「プロファイル 2」…と順番に割り振られます。
• 「新しいプロファイル管理」で作成したプロファイルは、従来の「installs.ini」と「profiles.ini」では「元のプロファイル」のパスだけ変更されたものとして扱われます。
  添付ファイル:
  
  「元のプロファイル」のパスだけ変更される.jpg [ 131.62 KiB | 表示数: 5774 回 ]
  
• 「新しいプロファイル管理」でのカスタマイズ等の設定は、「Mozilla\Firefox\Profile Groups」フォルダーに「元のプロファイル」ごとのIDで作成されるSQliteデータベースに保存されるものと思われます。

上記のことから、「新しいプロファイル管理」を使用する場合は別ドライブにプロファイルを作成したりできませんし、従来のプロファイル管理や手動での変更は避けるといった割り切りが肝要かと思われます。

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Firefox を「-profile」オプションを使用してプロファイルマネージャーを使用せずに起動していた場合、「新しいプロファイル」機能は有効化されないようです。
すなわち、PortableApps.comのポータブル版ではプロファイルのメニューは出てこないということです。
まあそうだろうとは予想していました。


元のプロファイルとそれに紐づくプロファイルのことをプロファイルグループと呼ぶみたいです。
データベースの中身はこんな感じでした。

profiles.ini で「ShowSelector=1」の場合にプロファイル選択画面が出ます。
「StoreID」の設定値がプロファイルグループのデータベース名のようです。

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Microsoft Store（MSIX）版の Firefox でも、about:config で「browser.profiles.enabled」の値を true にすることで「新しいプロファイル管理」を使用することができます。
MSIX 版はプロファイルフォルダーを隠そうとする挙動がありますので、プロファイルを直接いじるような使い方をしないライトユーザー向けととも言えます。
参考：[Microsoft Store] MSIX 版の Firefox について

私見ですが、「新しいプロファイル管理」は MSIX版との相性が良いような気がします。

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Bug 2004345 Deleting a profile from about:profiles doesn't clean up selectable profiles
上がったばかりのバグなのですが、興味を引いたのでこれを元に話をしてみます。

まず、私が便宜上本トピックで「新しいプロファイル管理」と呼んでいるものは「selectable profiles」ということらしいですね。
これが統一された用語なのかどうかはわからないですが。
Toolkit 側（profiles.ini／about:profile）のプロファイルに紐づいて、プロファイルフォルダーだけ選択リストから選んで切り替えるから…と私は思ってます。

Bug 2004345 は「about:profile」でプロファイル削除した場合の話ですね。
まず、その前提となる状況を作ってみます。

例として、標準のプロファイル2個に「TEST」というプロファイルを追加、それを規定にした状態で「新しいプロファイル管理」で3個プロファイルを作ったとします。
（「Firefox を開いた時にプロファイルを選択する」のチェックは外しておく）

すると profiles.ini はこんな感じ（抜粋）になります。[Profile2]セクションに「StoreID=28005943」が設定され、Profile Groups フォルダーに「28005943.sqlite」の名前のDBが生成されます。
そのDBの「Profiles」テーブルに下記が設定されます。
ここから、プロファイル「A」を選択して起動するようにしてやると、profiles.ini の [Profile2]セクションの Path は「Path=Profiles\ACiyExq8.プロファイル 1」と変更されます。
about:profile を開いて、プロファイル「default-release」を規定に変更して Firefox を起動し直しすと、やっと Bug 2004345 の前提となる状況の例が完成です。

この状況から、about:profile 画面でプロファイル「TEST」を削除します。
さあ、何が起きるでしょうか。

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（続き）
まず、about:profile 画面と profiles.ini からプロファイル「TEST」が消えます。
「TEST」で起動できなくなったため、当然それに紐づく「A」「B」「C」の選択画面にもアクセスできなくなります。
しかし、DB「28005943.sqlite」は更新もされずにそのまま残ります。

プロファイル「TEST」を削除する際に「ファイルを削除」選ぶとプロファイルフォルダ―が削除されるわけですが、この場合に削除されるのは「o9dt6j4z.TEST」ではなく「ACiyExq8.プロファイル 1」の方です。
ユーザーの意図として「A」のデータを消したかったのか、「TEST」「A」「B」「C」の全部を消したかったのかはわかりませんが、いずれにしても意図とは異なる中途半端な結果となり、UIから残りのフォルダーを削除する導線は失われます。
そんなわけで、
https://bugzilla.mozilla.org/show_bug.cgi?id=2004345#c0
というのが、現実的な解決策なように私は思います。

については、危なっかしいので私は否定的です。

そもそも、Selectable Profiles は現状、プロファイル選択画面でリストから削除することはできますが、プロファイルフォルダーを削除する選択肢はないようなので、こっちらを先に解決すべきかと思います。

削除を選んだ際の画面には

プロファイル ○○ を削除しますか？
Firefox は以下のデータをこの端末から完全に削除します:

ウインドウを開く
タブを開く
ブックマーク
履歴 (訪問したページ、Cookie、サイトデータ)
自動入力データ (住所、支払い方法)
パスワード

と表示されており、選択はできなくなりますが「端末から完全に削除」ではないため嘘になっています。

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