いまさらですが、横から失礼します。若干重複する内容もあろうかとは思いますが...。
ぼく自身は、長年 Thunderbird を使ってきて、[ごみ箱] が消えたというトラブルに遭遇したことは一度もありません。
しかし、earl さんが仰っているように、このフォーラムにも "ごみ箱が消えた" 系のトピックはいくつかありますし、Bigzilla にも複数の報告が上がっています。
ということは、そういう事象が発生している事実はあり、ならばその原因もどこかにあるわけです。
ですが、報告されているケースがすべて同じ原因とは限りません。例えば、IMAP アカウントで発生したという事例では、対象の IMAP サーバーとの同期関係を正しく設定し直すことで解消できる場合があります。半面、報告されている事例の中には、発生機序を明らかにできないまま報告だけで止まっているものもあります。
Thunderbird のバグだとしても、どういう条件下で発生するのか具体的な検証ができなければ、どこをどう修正するのが適切なのか見えてこないので、修正のしようがない、ということになります。普遍性の高いバグであれば、多くのユーザー環境で発生することになり、洗い出しも進めやすいでしょうが、特定のユーザー環境でのみ発生する問題では、発生に際して非常に特殊な条件が関与しているのかもしれず、そのあたりを明らかにしていく必要が出てきます。
一方、Thunderbird 以外に原因があって起こっていたり、運用上の不備から生じていることなら、Thunderbird 側で改善できることはありません。
以下、個人的に気になること、強調しておいたほうがいいかもと思った点について述べさせていただきます。
(A)フォルダーペインとプロファイルの関係Thunderbird のフォルダーペインに表示される標準フォルダー([受信トレイ] 、[ごみ箱] 、[送信済みトレイ] など)と、プロファイル内の実体ファイルの関係は既出のとおりでが、本質的にはプロファイルほうが主であり、フォルダーペインの方はそれに従った表示名であること強調しておきたいと思います。
[ごみ箱] を例にすると、実体はプロファイル内の Trash が固定名で、Linux 、Mac 、Windows の各プラットフォームと、それぞれの日本語版、英語版など各言語版において、すべて共通です。
この Trash に対し、フォルダーペインに表示される名称は、Windows の日本語版なら [ごみ箱] と表示されますが、Mac の日本語版では [ゴミ箱] です。英語版はそのまま [Trash] です。他のプラットフォームと言語版の組み合わせでも、それぞれ習慣的・一般的な名称に置き換えてフォルダーペインに表示されます。
(補足1)
[このメッセージ内を検索] (Ctrl + F) に [大文字/小文字を区別] という設定項目があるように、厳密には文字の区別があります。Windows(Mac も?)では伝統的に大文字・小文字を区別しない取り扱いがデフォルトです。Linux では区別するのがデフォルトです。
したがって、Windows 環境に限れば Trash と trash が区別されずに同じような振る舞いをすることはあると思います。しかしながら、各プラットフォームと各言語版で共通かつ固定化されている標準フォルダーの名称であること、プラットフォーム間でのメールデータの移行・共有が可能なことをふまえるなら、プロファイル内のファイル名は、大文字・小文字の区別を含めて Thunderbird のデフォルト条件を正確に取り扱う習慣を持ったほうがいいと思います。
(補足2)
メッセージ格納形式が標準の mbox 形式なら、これまで述べられてきたように、[ごみ箱] の実体はプロファイル内の Trash ファイル(拡張子なし)です。
一方、まだ実験段階の maildir 形式を使用したときは、[ごみ箱] の実体はプロファイル内の Trash フォルダーとその配下の cur フォルダーで構成されます。この場合、ファイルとフォルダーの違いはありますが、Trsah という名前は共通です。
(以下は、標準の mbox 形式で述べます。)
(B)自動生成される標準フォルダーについて初めて Thunderbird をインストールしたときや、新しいプロファイルに移行したとき、最初にメールアカウントを作ると、最小限の標準フォルダーが生成・表示されます。IMAP アカウントと POP アカウント、ローカルフォルダーによって若干の違いがありますが、何もない状態から Thunderbird が初期条件で自動生成する標準フォルダーがあるという点に注目してください。
そして、ローカルフォルダーでは [ごみ箱] と [送信トレイ] の2つがそれです。
標準的な設定で正常に稼働している Thunderbird で、プロファイルの [Local Folders] から強制的に Trash ファイルを削除しても、Thunderbird を再起動すれば自動的に Trash ファイルが生成されます。そのため、フォルダーペインのローカルフォルダー配下に [ごみ箱] が表示されない状態を作るのは、簡単そうにみえて意外に難しいです。
このことを前提に考えれば、
earl さんが書きました:
何度作っても、再起動で消えてしまうため、
というのは相当特殊なケースだと思われ、そのような症状を生み出す原因が何なのかは、興味深いところです。
(i)Trsah ファイルが削除される、に加え、(ii)Trsah ファイルの自動生成が阻害される、があって起こりうる症状のように思えます。これを生み出しているのが、単一の原因によるのか、別々の原因が組み合わさっているのか、そのあたりも気になります。
同時に、Trsah ファイルに対する動作異常もしくは外部の干渉を考えた場合、その同じ要因が panacea.dat や folderTree.json などフォルダーペインの表示に関連したファイル群に対しても作用していないかどうか、そのあたりも気になります。
(C)ポータブル版についてポータブルアプリケーションはいろいろありますが、総じて次のような特徴があると思います。
Windows OS の場合、インストール版のアプリケーションは、たとえるなら住民登録するような感じでシステム内の住所が定まり、Windows レジストリーというお役所を軸に住民サービスと住民管理がおこなわれることになります。
ポータブル版は、住民登録をしないでシステム内に滞在している旅人のようなものです。束縛という意味合いの "管理" からは自由ですが、半面なにをやるにしても自分の中ですべてを完結させた動作をとることになります。
例えば、公式版(インストール版)の Thunderbird は、必要最小限の情報が Windows レジストリーに登録され、コンテンツタイプの関連付けなどもその管理下で基本条件が構築されます。プログラム、プロファイル、キャッシュは、それぞれの役割に見合った権限の場所に別々に配置されています。
一方 Thunderbird Portable は、プログラム本体は ThunderbirdPortable\App\Thunderbird 、プロファイルとキャッシュは ThunderbirdPortable\Data\profile という具合に、ThunderbirdPortable という1つのフォルダー内にすべてが集約されています。公式版とポータブル版を同一条件で使用したとき、ポータブル版の Data\profile 内に蓄積されるデータの種類と量は、公式版のプロファイルとキャッシュを合わせたものになります。
問題なく稼働しているうちは、ユーザーが公式版とポータブル版の違いを意識することはないと思います。しかしユーザーの主観がどうあれ、上述のようなシステム内での立ち位置の違いが、問題発生の違いになって現われることはあります。
不幸にして問題が起こったときも、そのシステム内で定型ポジションを持つインストール版は、自明かつ共通の前提からトラブルシューティングを進めることができますが、ポータブル版は自由度が高い分、実際の個別条件に目を配りながらトラブルシューティングをおこなう必要が出てきます。
(公式版とポータブル版のどちらが優れているかという話ではなく、それぞれ特徴があり、どちらもトラブルが起こることはあるが、発生の原因や仕組みが同じとは限らず、対策方法も変わってくる、という話です。念のため...。)
例えば、Thunderbird Portable では、上述したようにメールデータを含むプロファイル部分とスタートアップやリモートコンテンツなどのキャッシュ部分が、いっしょに Data\profile 内に置かれています。
公式版では、重要度の違いからプロファイルとキャッシュは別々の場所にあるので、旧プロファイルの中身を新プロファイルにコピーしたとき、旧プロファイルに関連付いたキャッシュは、新プロファイルとの連携が断ち切られ、新プロファイルでは使用されなくなります。
しかしポータブル版の Data\profile で同じことをすると、キャッシュも一緒にコピーされます。このため、キャッシュまわりの問題がストレートに引き継がれてしまうケースがあります。この影響は Firefox Portable で顕著ですが、Thunderbird Portable でもゼロではありません。
公式版でもプロファイル内のデータに乱れが生じることはありますが、上述のようにポータブル版の Data\profile は公式版のプロファイルより多くのデータを含んでいて読み書きの頻度も多くなりますから、運用条件やこれまでの経過によっては、公式版以上にデータの一貫性や整合性が乱れる可能性もありえます。
過去、Thunderbird Portable をどのようにアップデートしてきたかによっても、Data\profile の中身に何かしらの影響が生じることもあるでしょう。
総じて、公式版のプロファイルと、ポータブル版の Data\profile を、フォルダー単位で同一視してはいけません。(パーツごとに適正な取り扱いをすれば、互換性はあります。)
Thunderbird Portable を固定されたドライブに入れ、公式版のように固定的に使うことは可能ですが、本来は「ひとつの完結したアプリケーション環境を USB デバイスに入れ、複数の PC につなぎ替えても同じ条件で使える」ことに重点を置いて設計されているものなので、そこからくる制約や公式版との明確な差異(上述のようなこと)はあります。そのことが直ちにトラブルの原因になるわけではありませんが、問題の起こり方やトラブルシューティングの方法などに影響してくることはありますから、ご注意ください。
ポータブル版を頭から否定するつもりはまったくありません。上記では「違い」を強調しましたが公式版との共通点もたしかにあります。ユーザーが自らのニーズに基づいてポータブル版を使うのですから、ぜひ有意義に使っていただきたいと思います。
そのためにただ一点、「ポータブル版特有の "手綱さばき" が求められることを意識して使ってください」ということは申し上げておきたいと思います。
以上、あとから首を突っ込んであれこれ申し上げて失礼いたしました。
(おことわり)
現在、健康上の制約により不定期な書き込みしかできなくなっています。すぐに応答できない場面がかなり多くなりますことを、ご容赦ください。