横から失礼します。
既読動作の概要は kiki さんがご説明くださってるとおりですが、いくつか気になる点があったのでコメントさせていただきます。
以下、ウィルス、ワームなど多種の不正プログラムの総称として使われている「マルウェア」という言葉を使います。また、ここでは便宜上フィッシング、ファーミングなどの詐欺行為も含めるものとします。
nico さんが書きました:
既読にしてしまったらメールを開いたことになり、万一ウィルスメールであった場合まずいと思いました。
この、Thunderbirdの既読という機能は、メールの中身を開いたことになるんでしょうか?
一般に「メールを開く」とは、そのメッセージソース(エンコードされたデータ)の本文パートを展開(デコード)して人間が認識可能な形で表示することです。
Thunderbird は、既読・未読のフラグをヘッダパートで制御していますが、必ずしも本文のデコードと連動しているわけではありません。
実際にやってみるとわかりますが、本文を展開しないで既読・未読を切り替えることはできます。
つまり、既読にすることが直ちに本文の展開を意味するわけではありません。
また、「メールを開く」ことが必ずマルウェア被害に直結するわけでもありません。
とくにプレーンテキスト形式のメッセージでは、「メールを開く」だけでマルウェアを発動させることはまず考えられません(油断は禁物ではありますが...)。
ただし HTML 形式の場合は、攻撃側にとって巧妙な方法を使える余地が多分にあるので、プレーンテキスト形式よりずっと危険性は上がります。
「添付をインラインで表示」を有効にしている場合も同様ですが、いずれにしてもパソコンにウィルス対策ソフトを導入し、常に最新の定義ファイルを使ってリアルタイムにチェックをかけているのなら、その危険度を大幅に抑えることはできると思います(100 %とはいいませんが)。
これは Thunderbird に限らず、たいていのメジャーなメールクライアントにはあてはまることです。
電子メール経由のマルウェア被害を生む原因の上位は、
・添付ファイルの安易な実行
・リンク先への不用意なアクセス
―― などです。メールクライアントやセキュリティ対策ソフトが完全でないことはもちろんですが、仮にそれらが警告を発してもユーザーがそれを軽視・無視していいかげんな行動をしたら、被害を受けることは十分ありえます。
昔も今も、「ヒューマン・セキュリティホール」が最大の弱点であることは、ほとんど変わっていません。
一方、サーバからメッセージを受信する行為自体、データを取り込む・読み込むことです。
マルウェア被害を恐れるあまり、それさえ忌避するようでは電子メールそのものが成り立ちません。メールデータを "読み込まない" で、どうやってメールクライアントは働くのでしょう。
もうひとつ。
サーバ側で迷惑メール対策・マルウェア対策を講じていても、それらをすり抜けるケースをゼロにできない以上、危険はなくならないというのは一面の真実です。
他面、日常的にメールのやり取りをしている友人や同僚、顧客、取引先などからのメッセージ(つまり正当なメール)にマルウェアが混入してくる可能性もゼロではありません。通常、迷惑メールにマルウェアが含まれる(誘導される)割合は高いですが、非迷惑メールを警戒しなくていいわけではないということです。
重要なのは、迷惑メールなど特定のシチュエーションだけでなく、
外から入って来るあらゆるデータ を適切にチェックする姿勢だと思います。
これは、USB メモリ経由で Word や PDF ファイルを取り込むような場合にもあてはまります。
セキュリティに気を使うことはとても重要ですし、nico さんの着眼点は間違っていないと思います。
けれども根拠のない、あるいは誤解にもとづく過剰な警戒は、メールやパソコンの利便性・運用性を大幅に低下させ日常業務に悪影響を与えかねませんし、逆にある方面だけに気を使い過ぎるあまり別方面のセキュリティへの注意がおろそかになるという副作用を生んだりして、結果的にトータルのセキュリティ・リスクを高めてしまうこともあります。
セキュリティ対策(とくにビジネス面での)は、正しい理解の上に有効な手立てを淡々と打っていくニュートラルな姿勢が大切だと思います。
最後に、パソコンそのものに対する安全対策がしっかり施されていて、ユーザーも一定水準のセキュリティ意識を持っているのであれば、ご質問のような使用方法における Thunderbird の安全性は、他のメジャーなメールクライアントと同等かそれ以上だと思います。(もちろん "完璧" ではありませんから油断は禁物です。)
ご質問の趣旨からズレた話かもしれませんが以上です。おかしなことを書いてたらすみません。
(余談)
これを書いていて、「徒然草」第109段の話が頭に浮かんできました。
いかにも怪しそうなメールには誰でも警戒しますが、これは安全だと思い込んでいるところに意外な落とし穴があったりするんですよね。自戒しなければ......。