どちらもすでにサポートが終了して久しい製品であることを承知の上で、Mac OS X 10.5 と Firefox 16.0.x を組み合わせて Firefox Sync を利用したいということですか?
Firefox 29.0 から、Firefox アカウントを使った新しい Firefox Sync が利用できるようになりました。2014 年 4 月末ごろです。
しばらくは新旧の Firefox Sync が使えましたが、2015 年 9 月 30 日 で古い Sync のサービスは終了しました。Firefox 41.0 がリリースされたころです。
現在、新たに Firefox Sync を利用するには Firefox アカウントを取得する必要があります。
OS 環境が違いますが、Windows XP + Firefox 16.0.2(16.0 系の最終バージョン)というサポート切れの組み合わせで試してみました。
https://accounts.firefox.com/signupにアクセスは可能で、「Firefox アカウントの作成」の入力画面を表示することは問題なくできました。(ただし、登録する意思はないため、実際に登録可能手続きは試していません。)
もしかしたら、そのまま登録可能かもしれませんし、そのままではできないのかもしれません。User Agent を "偽装" するなどして誤魔化すことで、できるのかもしれませんし、できないかもしれません。
しかしながら、もし Firefox アカウントの登録ができ、Firefox Sync もセットアップできたとしても、Firefox 16.0 の保持する各種データの同期については不安要素があります。
例えば、Firefox 38.0 から、パスワード情報を保存するファイルが変更されました。Firefox を順当にアップデートしていれば、パスワード情報は新しいファイルに引き継がれます。この場合、Firefox Sync が対象とするのは新しいファイルのほう(あるいはその中のデータ)だと考えられます。
Firefox 16.0 系では、どうあがいてもパスワードは古いファイルしか使えないので、この状態で正常にパスワードの同期ができるのかという疑問があります。(同期相手の環境条件にも左右されるでしょう。)
セッション管理の方法なども、細部で変更されていたような記憶があります。
同様に、新しいバージョンの Firefox で変更・廃止されたものがあれば、Firefox Sync はそれをふまえた同期処理をおこなうだろうと考えられます。Firefox Sync のサービス自体が、新しいバージョンの Firefox に適合するように調整されていくはずだからです。
ESR 版の存在があるので、その分のバージョンの開きあたりまではカバーされているのかもしれませんが、2012 年 10 月にリリースされた Firefox 16.0 まで万全なカバー範囲に入っているかと問われれば、まったく自信はありません。
セキュリティ面では、とくに SSL/TLS の実装と初期設定の有り様が、Firefox 16.0 の時点とは大きく変わっています。
各ブラウザの最近のバージョンでは初期設定として無効化または削除されている SSL v3.0 が、Firefox 16.0 では初期値で有効のままです。逆に、新しい TLS 1.2 / 1.3 などの実装がされていなかったように思います(この点はうろ覚え...)。初期状態で入っている証明書も古いままでしょう。
こういうバックボーンの下で、Firefox 16.0 が安全・安定な https 通信をできるのか、という点に大きな不安があります。これは、Firefox Sync の利用時を含めての話です。
言及しきれないその他の事情も含めて上記のようなことがあるので、ぼくからは "利用しないほうがいい" と考えることをお勧めします。
(余談)
十分ご承知のことと思いますが、こういうオープンな場でのお約束なので触れておきます。
常套句ではありますが、サポートが終了して久しい OS と Firefox は、Firefox Sync の利用に限らず、それらを使うこと自体が避けるべきことではあります。
やむをえない事情があるなら、ネットワークから切り離した完全なスタンドアローンで使うとか、制限した用途ならまだ許容範囲にはなるかもしれません。
いずれにしても、相当古いシステムを運用せざるをえないのなら、現役のシステムと同等に使おう(例:Firefox Sync を普通に使おう)などと欲を出さないことが肝要かと思います。トラブルを呼び込んでしまう間口を、自らすすんで大きく広げてしまうことになりかねません。
「消費期限が切れて何年もたった食べ物を、絶対に安全かつ美味しく食べたい」という要求に、"この方法なら確実です" と答えられないのと同じです。