Thunderbird 68.12.0 から 78.2.2 への自動アップグレードが開始されました。
さっそくプロファイルのバックアップを取ったうえでアップグレードを行い、Enigmail による移行作業も完了させました。
ローカルで試してみましたが、署名/検証・暗号化/復号は問題なく行えています。
鍵管理も、Enigmail のものを基本的には踏襲しています (鍵への署名、信用度の設定に関しては大きく変わっていますが、移行ウィザードに任せていれば既にGnuPG の鍵束にあるものに関してはそのまま Thunderbird のほうに状態も含めてコピーされています)。
ただ、一つ問題がありました。副鍵を追加している秘密鍵の扱いについてです。
以下のような秘密鍵を想定します。
sec rsa4096/XXXXXXXX11111111
作成: 2010-01-01 有効期限: 無期限 利用法: SC
ssb rsa4096/XXXXXXXX22222222
作成: 2010-01-01 有効期限: 無期限 利用法: E
ssb ed25519/XXXXXXXX33333333
作成: 2020-01-01 有効期限: 無期限 利用法: S
ssb cv25519/XXXXXXXX44444444
作成: 2020-01-01 有効期限: 無期限 利用法: E
Tb 68 以前 + Enigmail + GnuPG の環境であれば、この鍵での署名、この鍵への暗号化にはそれぞれ 33333333、44444444 が使われます (利用法 S、E について最新のものが使われる)。副鍵の追加は主鍵を変更せずに鍵の更新を意図したものですから、新しい副鍵が使われるのは当然の挙動です。
しかし、現在の Tb の OpenPGP 実装では、署名には主鍵である 11111111 が、暗号化には古い暗号化用副鍵である 22222222 が使われています。
これについては bugzilla に報告済みです。
Bug 1665281 - Tb-native OpenPGP implementation does not use newer subkeys
https://bugzilla.mozilla.org/show_bug.cgi?id=1665281