【ダミーアカウントまたは解約したプロバイダのアカウントをローカルフォルダー化する】上記で作成したダミーアカウントから POP や IMAP などサーバーの性格付けを解除し、対応サーバーを持たないローカルフォルダーの性格づけに変更して運用することができます。
解約したプロバイダのアカウントを復活させることは絶対ないと判断できるなら、解約済みアカウントでも同じことができます。
ぼくが自己責任の下で運用してきた自己流の方法ですが、メールの保管用などスタンドアローンなアカウントとして使う限り、複数のバージョンに渡り何年も使ってきてトラブルには遭遇していません。
積極的にお勧めできる方法ではありませんが、この機会に概要を紹介しておこうと思い立ちました。ひとつの参考事例としてご覧いただき、ユーザーの環境条件やニーズに合わせて工夫・応用していただければ幸いです。
(2段階の考え方)ここでは "ローカルフォルダー化" を2つの段階に分けて考えています。
<i> 特定サーバーとの対応関係だけを断ち切る段階
<ii> アカウント設定の項目などを既定のローカルフォルダーと同等な状態にする段階
作業は [設定エディター](about:config )を使います。
(共通の準備)まず、ローカルフォルダー化したいアカウント(ダミーや解約済み)の既存情報を把握します。
そのためには、対象アカウントの [アカウント設定 - <アカウント名>] の最初にある [アカウント名(N):] 欄の文字列を出発点にします。ここでは、そのアカウント名が「hoge@piyo.com」だったと仮定します。
(共通の準備の手順)・[オプション] -> [詳細] -> [一般] -> [高度な設定] にある [設定エディター] を押すと、about:config ウィンドウが開きます。
・警告文をよく読んだ後、[危険性を承知の上で使用する] を押すと、編集画面に切り替わります。
・[検索] 欄に、上記でコピーしたアカウント名の文字列(hoge@piyo.com)を貼り付けると、下欄にその文字列を含む項目がリストアップされます。
・この中の、mail.identity.id
M.*** と mail.server.server
N.*** の項目に着目します。
M や
N は正の整数です。ここでその [アカウント名] に対応する ID とサーバー番号を把握します。
・この id
M と server
N からたどって、このアカウントの大本の設定を調べます。
[検索] 欄に、id
M や server
N を入れ、[値] にそれらの文字列を含む
mail.account.account
P.identities ; id
M mail.account.account
P.server ; server
N を把握しておきます。
P も正の整数です。
M 、
N 、
P は、必ずしも一致してはいません。
( <i> の段階を設定する作業)・about:config の編集画面で、[検索] 欄に mail.server.server
N.type と入力します。これは、アカウント(hoge@piyo.com)のサーバータイプ(性格、種別)を定義する項目です。元が POP アカウントなら値は pop3 になっているはずです。
・この設定名をダブルクリックするか右クリックから [値を変更] を選ぶと、[文字列を入力してください] のダイアログが開きます。
・入力欄の pop3 を削除し、none と入力して [OK] ボタンで閉じます。about:config や オプション設定のウィンドウを閉じ、Thunderbird を再起動します。
・次に Thunderbird が起動したとき、タイプを none に変更したアカウント(hoge@piyo.com)のアイコンが、ローカルフォルダーのアイコンと同じに変わっているのがわかるでしょう。アカウント設定の [<アカウント名>] -> [サーバー設定] -> [サーバーの種類:] は、[ローカルメール 保存] になっていると思います。
・以後このアカウントは、基本的にローカルフォルダーの性格で働くようになります。
( <i> の補足説明)mail.server.server
N.type の値は、POP アカウントなら pop3 、IMAP アカウントなら imap です。フィードアカウントなら rss 、ニュースグループなら nntp 、チャットアカウントなら im のようになっていて、そのアカウントの対応サーバーの性格を定義付けており、アカウントはこの定義に基づく動作をするようになります。設定項目も変化します。
none は、既存のローカルフォルダーに対して与えられている既定値であり、具体的な対応サーバーを持たないニュートラルなタイプを意味する値です。
上記の設定後に [アカウント設定] を開いてこのアカウントを見ると、本来のローカルフォルダーの設定内容とは異なっているのがわかります。これは、元々 POP や IMAP として設定されていたアカウントのサーバータイプを無理に変更した結果です。
とくにサーバー関係の設定項目に注意を払ってください。POP と IMAP が混在したような状態になっているはずですが、メールサーバーとの対応関係は停止されているので、どの項目も実質的な意味はありません。例えば、[サーバー名] や [ユーザー名] が生き残ったまま、[新着メッセージがないか起動時に確認する] などが有効になっていたとしても、サーバーとの通信全般が働かない状態なので、それらの設定内容を反映した動作はおこなわれません(ゆえにエラーメッセージも出ません)。
[受信] ボタンからもこのアカウントは削除されますし、このアカウントを選択して右クリックから開くコンテキストメニューにも、[メッセージを受信する] のメニューは表示されなくなります。
一方、[送信控えと特別なフォルダー] や [編集とアドレス入力] など、サーバーとの通信が直接関係しない Thunderbird 内部で完結した動作の設定項目は、そのまま活用できます。もしこれらの設定項目を活かしたい場合は、この段階で作業を終えてかまわないと思います。
( <ii> の段階を設定する作業)<i> の設定変更で基本動作はローカルフォルダーと同等になりますが、アカウント設定の項目が乱雑になります。そのままでも実害はありませんが、既定のローカルフォルダーと同じようなアカウント設定の状態にすることもできます。手順は次の通りです。
(共通の準備の手順)で調べた mail.account.account
P.identities が鍵です。
・about:config の編集画面で、[検索] 欄に mail.account.account
P.identities と入力すると、下欄にその設定項目がリストアップされます。
・この項目名の値が id
M であることを確認したら、[値を変更] で id
M の文字列を削除し、[OK] ボタンで閉じます。
・Thunderbird を再起動したあと、このアカウントの設定を見ると、ローカルフォルダーと同じようになっているのがわかるでしょう。
・動作スタイルは、<i> で設定したサーバータイプ none の内容のままです。アカウントの ID を白紙にすることで、ローカルフォルダーでは実質的に意味がないアカウント設定の項目が表示されないようになります。
( <ii> の補足説明)既定のローカルフォルダーは、元々 mail.account.account
*.identities を持っていないので、それに準じるよう mail.account.account
P.identities の値 id
M を取り除き、個々の mail.identity.id
M.*** と連動しないようにしました。すでに存在している個々の mail.identity.id
M.*** は処理しなくても特に問題はないはずですが、気になる&自力対応できる方は、ニーズに合わせて対処してください。
(注意)ひとつのアカウントに対する Thunderbird の設定条件は、複数の項目が連携し合って成り立っています。
アカウントの大本は、
コード:
mail.account.accountP.identities ; idM
mail.account.accountP.server ; serverN
で、そのアカウントの ID とサーバー番号が定義され、これに対応して
コード:
mail.identity.idM.***
mail.server.serverN.***
という複数の項目が存在します。
とくに解約したアカウントで mail.server.server
N.type を none にして使うと、その後の使用経過によっては他の設定項目との整合性が崩れる場合があります。
none の性格で使う限りは、それで動作不良が起こることはないはずです(少なくともぼくは経験していません)が、そのような状態になってしまったアカウントのサーバータイプを none から pop3 に戻しても、POP アカウントとして正常に復活させることはできません。
冒頭で、
解約したプロバイダのアカウントを復活させることは絶対ない と念を押したのは、そういう意味があります。
あるアカウント(IMAP / POP)を一時的に無効化し、のちに復活させたいようなケースでは、安全のためこの方法は使わないでください。
ダミーアカウントの場合は、元々のサーバー情報が架空ですし、それを意図して作ったアカウントなので、気兼ねなくローカルフォルダー化できるでしょう。
(補足)LocalFolder というそのまんまな名前のアドオン(拡張機能)があり、Thunderbird 52.x 系 まではこれを導入することで複数のローカルフォルダーを作成でき、メール管理に使えました。やっているのは上記と同じことですが、[アカウント操作] から自動的にローカルフォルダーの作成をおこなってくれました。(ただし、既存のメールアカウントをローカルフォルダー化する機能はありません。)
しかし、次期メジャーバージョン候補の Thunderbird 60 からは、アドオンの互換性が変更され、このアドオンは使えなくなっています。(Firefox 57 で旧形式のアドオンが使えなくなったのと同じことのようです。)
しかし、上記の方法は(少なくとも当方の 60.0b6 では)通用しているので、そういうニーズのある方には利用価値があるかもしれません。
長くなりましたが以上で終わりです。役に立たない話だったらフォーラムのリソースを浪費して申し訳ありませんでした。
間違いの修正や不十分な内容への補足、新たな知見などの書き込みを歓迎します。
(おことわり)
現在、健康上の制約により不定期な書き込みしかできなくなっています。すぐに応答できない場面がかなり多くなりますことを、ご容赦ください。