【重要な前提】(1)"意図せず消えた" 、"誤って削除してしまった" といったトラブルにおいては、可能な限り早い段階でプロファイルのバックアップをとっておくことをお勧めします。
発生している問題によっては、あるいは復元しようとしておこなった操作内容によっては、何かやるごとに復元を遠ざけてしまうケースがあるからです。
(2)この種のトラブルでは、手間を惜しむほど「確実な復元」が遠ざかるとでも申しますか、「簡単・即席な解決方法」を求めることが「確実な復元」を妨げることが多いです。これには、予備知識を理解する手間も含まれます。よく理解せず安易におこなった操作が "止めを刺す" ことがあるからです。
(3)とくに、Thunderbird におけるメッセージ削除の仕組みを把握しておくことを強くお勧めします。
えむもじら さんの、次の記事がわかりやすいと思います。
(参考)・Thunderbird のメッセージ削除の仕組み - えむもじら
http://level.s69.xrea.com/mozilla/index ... sageDelete【本題】お使いの Thunderbird で [アカウント設定] -> [ローカルフォルダ] -> [ディスク領域] からおこなった設定により、[ローカルフォルダ] 配下にある標準の [受信トレイ] をはじめ仕分け用の複数のフォルダから、指定した日数以前のメッセージが削除されたということですね。
この場合、削除された直後は、それぞれのフォルダの実体ファイルの中で、削除済みのフラグがつけられただけでメッセージのデータそのものは残っているはずです。
通常の削除と異なるのは、[ごみ箱] に削除メッセージのコピーが生成されないことです。
一例を挙げると、[ローカルフォルダ] にある [受信トレイ] の実体は、プロファイル内にある次のファイルです。
%appdata%\Thunderbird\Profiles\xxxxxxxx.default\Mail\Local Folders\Inbox
(注)拡張子のない Inbox ファイルが重要です。Inbox.msf というのは、Inbox の要約ファイルに過ぎないので、ここにはメッセージのデータはありません。
仮に、[受信トレイ] に 100 通のメッセージがあったとすると、Inbox ファイルの中にはこの 100 通分のデータが納められています。
個々のメッセージデータには、管理用のヘッダが付けられています。
このうち、メッセージの保持状態(ステータス/Status)を規定しているのは、
X-Mozilla-Status:
というヘッダです。
これが、
X-Mozilla-Status: 0009
のように、0009 の数値になっているものは「削除」を意味しています。0000 なら「未読」、0001 なら「既読」です。
X-Mozilla-Status: 0009 は、Thunderbird 上ではいっさい表示されません。
このことから、
X-Mozilla-Status: 0009
となっている部分を、
X-Mozilla-Status: 0001
にしてやると、Thunderbird は既読メッセージとして認識するようになり、いわゆる復元できることがわかります。
原理的には、
文字コードの取り扱いに厳重に注意しつつ、Inbox ファイルをテキストエディタで開き、上記の値を書き換えれば、削除直後なら高確率で復元することが可能です。テキストエディタの置換機能を使えば、かなり簡単に一括変換することもできます。
(注)プロファイル内を操作するときは、必ず Thunderbird を終了させた状態でおこなうのが鉄則です。
Thunderbird 上のフォルダの実体は、それぞれ対応するプロファイル内のファイルなので、それらのファイルごとに作業が必要になります。
このフォーラムの次の過去トピックの中でいくつかの復元ツールが紹介されています。そうしたものを使うのも手です。
(参考)・[解決済み] ごみ箱の中のメールを確認することができません(消去したメールを復元できません)
viewtopic.php?t=14073(紹介されているツールも上記のことを自動的にやっているだけなんですが、ツールごとの仕様があるので、個々のツールの取り扱い説明には十分注意を払ってください。)
【注意】上述の方法は、
X-Mozilla-Status: 0009
とマークされたメッセージデータが残っている限りは使えますが、Thunderbird で [最適化] が実行されると、このマークがついたメッセージデータそのものが完全に消し去られます。
こうなったら、復元の手立てはありません。
そのため、問題に気づいた後、できるだけ早い段階でバックアップをとっておくことが、一定の "保険" の役目を果たします。(日常的にバックアップをとってあれば、この限りではありません。)
テキストエディタでの修正操作に失敗しても、バックアップがあれば、やり直すチャンスが残っているわけですし...。
上記の方法で実体ファイルを修正したあと、Thunderbird を起動しても復元できていないように見えることがあります。
復元に失敗しているケースもありますが、単に msf ファイルのデータが更新されていないだけのこともあります。
Thunderbird 上でフォルダのプロパティから [フォルダを修復] を実行すると、最新の実体ファイルの内容を反映させた msf ファイルに更新されます。復元に成功していればスレッドペイン(メッセージリストペイン)に復元されたメッセージが表示されるでしょう。(これでも表示されないなら復元に失敗していると考えられます。)
いずれにしましても、一度削除したメッセージを復元する作業は、とてもデリケートです。
今回は Thunderbird の機能を誤って使ってしまった事例ですが、不具合などが原因のケースも含めて、問題発生後にユーザーがおこなった操作とその結果によっては、完全な復旧が妨げられてしまうことが、しばしばあります。
そのあたりをふまえて、慎重に作業してください。
とりあえず以上です。復元が成功することを祈ります。