ご存知の方も多いと思いますが、Firefox 15.0 では about:preferences という about: 項目が追加されています。
これは、オプション / 環境設定 から開く [設定ウィンドウ] の内容を、ブラウザのコンテンツエリア(Web ページが表示される領域)に表示し、操作できるものです。
chrome://browser/content/preferences/preferences.xul をロケーションバーに入力して、[設定ウィンドウ] の内容をコンテンツエリア内に開くという裏技も以前からありましたので、とりたてて目新しさがあるわけではないのですが、chrome URL の方法はそれなりに制約もありましたから、about:preferences の導入でより簡便になったといえると思います。
【よいと思うところ】
コンテンツエリアに表示できるということは、表示機能の [ズーム](拡大 / 縮小)が使えるため、ユーザーによっては助かる場面が期待できます。
ユーザーの視覚条件(弱視、老視など)、環境条件(モニタの物理サイズや解像度など)によっては、従来の設定ウィンドウの項目や説明が小さくて読み難い、あるいは逆にモニタ内に納まらない ―― などというケースがあります。
しかし、about:preferences を使えば、Web ページをズームする要領で設定画面をズームでき、拡大時にはスクロールバーも出ますから、上述のような悩みを抱えていたユーザーには便利な選択肢が増えたことになります。
せっかく GUI で提供されている設定項目なのですから、使い勝手がよくなるのはいいことですね。
【注意すべきところ】
Mac や Linux のユーザーともかく、Windows ユーザーには不慣れな点があろかと思われます。
about:preferences で開く設定画面(タブ)では、[OK] や [キャンセル] などのボタンが表示されません。(chrome URL の方法では表示されます。)
各設定項目を操作した内容は、直ちに反映されます。ようするに browser.preferences.instantApply;true の動作です。
Windows ではデフォルトが browser.preferences.instantApply;false なので、従来の設定ウィンドウには [OK] や [キャンセル] のボタンがあり、各設定項目を操作したのち [OK] ボタンを押さないと変更が反映されない仕組みです。
(そのため、Windows 環境で標準設定の Firefox のまま chrome URL の方法を使うと、[OK] ボタン押下と同時に Firefox のウィンドウごと閉じます。)
しかし、about:preferences 画面では、前述のように各項目を操作したとき直ちにその結果が反映されます。なので、設定を完了したらタブを閉じるだけです。Windows ユーザーはこの点に注意してください。
【気になるところ】
about:preferences の画面を複数のタブでも開けることと、従来の設定ウィンドウを同時に開けてしまうため、紛らわしいという点がひとつです。ただし、実害はなさそうです。
・Firefox 本体が browser.preferences.instantApply;true で定義されているとき
about:preferences 画面はもちろん、従来の設定ウィンドウも設定の変更が直ちに反映されます。
複数開いた設定画面のどれかひとつで変更した項目は、開いているすべての画面に直ちに反映されるため、ユーザーが目視する設定画面によって異なる内容になっていることはなく、整合性のとれない設定をおこなってしまう危険はまず考えられません。
・Firefox 本体が browser.preferences.instantApply;false で定義されているとき
about:preferences 画面では true の動作をしますから、複数の about:preferences 画面を開いたとしても問題が起こらないであろうことは上と同じです。
一方、従来の設定ウィンドウを開くと、[OK] か [キャンセル] で閉じるまでは about:preferences 画面(タブ)をアクティブにできません。このため、about:preferences 画面と設定ウィンドウを行き来しながら矛盾した設定をほどこしてしまうことはありません。
ひととおり試した限りでは、矛盾を生むような設定操作になってしまうケースは見出せませんでした。
しかし、従来の設定ウィンドウが簡単に同時オープンできてしまうのは、やはり紛らわしく、ユーザーに混乱を与える側面を残していると感じました。
もうひとつは、about:preferences 画面で [一般] 、[タブ] 、[コンテンツ] ……などのパネルをひとつ選ぶと、それらのパネルボタンが消え、左上にある左右矢印のナビゲーションボタンで戻ってから他のパネルに切り替えなければならない点です。
いずれも今後の洗練を期待します。
とはいえ、個人的には about:preferences を UI の改良として大きく評価したいと思います。
[トラブルシューティング情報](about:support)のときもそうでしたが、たとえ頻繁に使うわけではなくてもイザというときユーザーにとって利用価値の高い機能や、アクセシビリティ / ユーザビリティの向上に役立つ機能は、今後も歓迎したいと思います。
Thunderbird の開発プロセスが変更されたため今後の具体的な成り行きはわかりませんが、Thunderbird にも about:preferences の機能が実装されれば、
解像度の低い画面 | トラブルシューティング | Thunderbird ヘルプ のような問題の緩和策にもなるのではないかと思ったりします。
以上、この機能について熟知しているわけではありませんが、ざっと試した感想的レポートってことで...。